2015年9月8日
司法試験の合格者についての声明
ロースクールと法曹の未来を創る会
本日、司法試験管理委員会が発表した平成27年度の司法試験合格者判定は、法科大学院制度の意義を損ねるもので極めて遺憾である。ロースクールと法曹の未来を創る会は、国民とともに、来年度以降、2,000名を大きく上回る合格者の輩出に向けてさらなる活動を進めることを表明する。
1 法科大学院と司法の危機
法科大学院は、平成13年に政府の司法制度改革審議会が出した意見書に基づいて、設立された。同意見書が打ち出した構想では、法科大学院修了者の司法試験合格率は7割から8割とされていた。また、平成22年ころには、合格者の数も少なくとも3,000人程度となることとされていた。ところが、実際には、司法試験の合格率は、初年度こそ5割程度であったが、その後は低下の一途をたどり、昨年は、25%以下(22.6%)にまで下がった。当初の制度の趣旨とはまったく異なる事態が生じたわけである。2年ないし3年の期間と相当額の費用を投じて法科大学院を修了しても、合格する確率が3割にも満たないというのでは、多くの法曹志望者(特に社会人)が法科大学院への進学を躊躇するのは当然のことである。そのため、法科大学院への入学希望者、及び実際に入学した者の数は大幅に減り、今年の入学者は2,000人程度にまで下がっている。これは、まさに、法科大学院のみならず、司法全体の危機と言っても過言ではない。
2 国民は多くの法曹を求めている
こうした状況を受けて、本年6月、内閣の法曹養成制度改革推進会議は、「法曹養成制度改革の更なる推進について」を決定した。この中で、「今後の法曹人口の在り方」として、「新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有意な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである。」としている。
さらに、内閣官房法曹養成制度改革推進室が本年5月に示した「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)」では、これまで毎年1,800人ないし2,100人程度の規模の司法試験合格者を輩出したことについて、「一定の相当性を認めることができる」とした。このことは、同推進室が4月に発表した「法曹人口調査報告書」によると、国民の8割が「弁護士の知り合いがない」と回答し、「弁護士に依頼したいと考えたことがある者」の3分の2が、「弁護士の探し方が分からない」などの理由で弁護士に依頼していないこと、大企業でも弁護士の資格を有するものを雇用しているのが僅か13%に過ぎない反面、弁護士を募集した企業の3割が、「応募がなかった」と回答していることなどからして、当然のことである。つまり、国民と社会は、より多くの法曹を求めているということである。
法曹養成制度全体の趣旨と法科大学院制度との関係からしても、あるいは、上記の政府、政府機関の決定、調査報告等との関係においても、今年度の司法試験の合格者数が、昨年度の1,800人を下回るということは考えられないところである。当会は、司法試験委員会と司法試験考査委員に対し、2年前の平成25年の合格率(26.8%)に戻すためには、2,100人以上を合格させるよう要請してきた。合格者総数を1,850人とする今年の合格者判定は、法科大学院制度の意義を損ねるもので、極めて遺憾である。
以上の次第で、当会は、今年度の司法試験合格者判定に遺憾の意を表するとともに、来年度以降、合格者が2000名を大きく上回ることを求めて、さらなる活動を続ける決意を表明するものである。
以上
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