今こそ、司法修習の意義を問う
−「給費制」の議論を超えて−
記
日 時 : 2017 年 5 月 25 日(木)午後6 時〜8 時頃(開場午後5 時30 分)
場 所 : 弁護士会館10 階1003 会議室
(東京都千代田区霞が関1-1-3)
まず、特別講演として、元最高裁判所裁判官の泉徳治先生に「裁判所にとって司法修習は必要か」というテーマでご講演いただきました。
司法修習は、裁判所や検察官のリクルーティングのためのものであることや、研修所の維持は、そこで働く職員のためであるという鋭いご指摘がありました。
その上で、泉先生からは、リクルーティングに感s似ては法科大学院生との接触によることが可能であること、司法研修所の維持としては法科大学院生のサマースクール的集合教育の施設や狭隘な裁判所の一部として活用することができるなど、積極的なご提言も頂きました。
次に、基調講演として、早稲田大学大学院法務研究科教授で当会理事の須網隆夫先生に「法曹養成制度と司法修習」というテーマでご講演いただきました。
諸外国の法曹養成制度との比較から、日本の司法修習制度の問題についてご講演頂きました。
諸外国では、OJT中心の法曹養成ですが、日本では見学中心の研修で教育効果が低いこと、しかしそれなのに司法修習を維持させようとするのは、弁護士会にも問題があるとご指摘されました。
法科大学院における臨床法学教育、研修弁護士など、他に代替策はあり、既に修習を経ずに資格取得することも認められていることからすれば、原稿の司法修習を唯一の選択肢とするのではなく、制度設計に様々な工夫が可能であるとお話されました。
次に、株式会社ジュリスティックス リーガルプレースメント事業部長の野村慧様に「弁護士就職事情における司法修習制度の影響」についてご講演いただきました。
主に企業側が求めるニーズの視点から、お話いただきました。
企業としては、必ずしも司法修習所に通うことを応募者に求めているわけではありません。
それなのに、1年(司法試験終了後から数えると1年半)後を見据えた採用活動というのは、企業側としても難しくなります。
そうすると、採用側と応募側のミスマッチが市場に起こり、インハウスローヤーの増加の抑制原因になっているとのご指摘でした。
一方で、企業としてはロースクール出身者の需要があるのは間違いありません。
法曹資格を得るために義務的な司法修習の存在が、応募者にとって非常に不平等な専攻になっている現状について、データを用いてお話いただきました。
第二部は、「あるべき法曹養成制度と司法修習」というテーマで、パネルディスカッションが行われました。
・宮澤 節生 先生(カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院教授・神戸大学名誉教授)
・四宮 啓 先生(弁護士・國學院大學法科大学院教授)
・石井 逸郎 先生(弁護士・ウェール法律事務所)
・Glenn Kembrey 先生(実務研修生(トレーニー))
・モデレーター 岡田 和樹(弁護士・当会副代表理事)
諸外国の制度と比べると、やはり日本の司法修習制度は異質であることが浮き彫りになりました。
弁護士法上、7年の法務部等の実務経験があれば弁護士になれるということは、法が司法修習を必ずしも必要としていないことを自認しています。
それなのに、実務で働く人が司法修習よりも7倍多くの実務経験を必要とする合理的な理由が見つかりません。
司法修習制度は廃止、ないしは選択的なものにすべき提案がなされました。
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